おててがくりーむぱん2
「評価とは関係なく、佐田さんとも関係なく、書きたいと思っているなら、書いたらいいよ。簡単なことじゃないかもしれないけど、でも書けばいい。佐田さんもそんな光恵を愛してるんじゃないかな」
「ミツ、なんで辞めちゃったんだよぉ」
孝志の悲しそうな顔を思い出す。
「彼女は脚本家なんだ。いい本書くんだよ」
自分のことのように、自慢げに光恵を母親に紹介していた。
「そうだね」
光恵は頷いた。
自分を恥じているから、孝志の隣で堂々と顔をあげられないんだ。
彼と釣り合いが取れてないと思っているから、こんなにもダメージを受けている。
光恵は両手を握り合わせる。
今はまだ、孝志と結婚できない。
孝志と離れても、自分を見失ったりしない時まで。
「佑司とこのタイミングで出会ったのは、わたしを正しい道に導くため」
光恵は言った。
「あなたはいつも、正しいことを言う」
佑司は肩をすくめる。
「でも光恵はいつも、俺の望み通りにはならないんだよな」
そう言って笑った。
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それから間もなくして、佐田孝志が渡米するというニュースが飛び込んで来た。