おててがくりーむぱん2
あれから六年。
三十五歳の誕生日は、夜中まで脚本に向かっていた。
そんな日々。
光恵は今、登録脚本家として働いる。その会社にくる仕事が、登録している脚本家に回される。
一応、会社員だ。デスクもある。
正直、お給料はよくない。とにかく数をこなさなくちゃいけないから、必死になる。以前劇団で脚本を書いていたときのように、恵まれた環境じゃない。好きなことは書けないし、とりたてて誰かに褒められる訳ではない。
でも一応、この仕事だけで、食べて行けてる。
それだけが、光恵の誇り。
会社といっても、雑居ビルの一室。
「おはようございます」
光恵はもしゃもしゃの髪で、自分のグレーのデスクにどかっと座った。
思わず「ふう」とデスクにツップする。
すると「皆川さん、皆川さん」と隣から声をかけられた。
「ん」
デスクに顔をくっつけながら、けだるそうに顔を向けると、同僚の坂上が目を輝かせている。
「どした?」
すると坂上が「皆川さん、マジ、おめでとう」と言う。