おててがくりーむぱん2


「授賞式、来週だから。ちょっときれいにしてきなよ」
「え? ドレスとかですか? 持ってないですそんなの」
「馬鹿だなあ。ドレスは女優が着るの。スーツでいいって」
「ははは、そうですよね」


光恵は浮かれすぎて、足下がおぼつかない。


「じゃあ、コレ。締め切り来週の分だから」
楽しげな光恵の前に、どさっとファイルを投げる。


手に取ると、地方ドラマやスマホゲームの仕事。結構なボリュームだ。


「おわんな……」
溜息とともに、弱音が出る。


「終わらせる。それがプロの仕事」


社長はスパンと光恵を遮ると、これで話はおしまいというように、手で光恵に出て行くように示した。


光恵はファイルを抱えると、よろけながら部屋を出る。
そしていつもと変わらず、自分のデスクで猛然と書き出した。


ああ、でも。
やっぱり、幸せ。


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