おててがくりーむぱん2


偉い方々との挨拶。


光恵はぺこぺことお辞儀をして、脳しんとうを起こしそうだ。
その間も、まだ書き終わっていない脚本の続きが、頭の中をぐるぐると回っている。


「ドラマ、期待しててください」
プロデューサーらしき人が、光恵に笑顔で話しかける。


「ありがとうございます」
光恵は再びぺこんと頭を下げた。


「SBCも力を入れてますよ。主人公、佐田孝志ですから」


え?


突然、水の中に突き落とされたようだ。
遠くでプロデューサーが話しているのが聞こえる。目も耳も口も、水で覆われて、息ができない。


必死に水面に顔を出し、酸素を取り込もうと口をあける。


「どうした? なんだか溺れたみたいな顔して」
社長が光恵の変化に首を傾げた。


「……いえ」
光恵はぶるぶると首を振った。


「今日のプレゼンテーター、佐田さんですよ。見たことあります? ほんと、男の僕でも惚れますよ、あれ。皆川さん、見られてラッキーですよ」


プロデューサーが能天気にそう話した。


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