おててがくりーむぱん2


「じゃあ、佐田さんいらしてるんですか?」
「はい」


「し、しつれいします」
光恵はくるりとプロデューサーに背を向けたが、逃げるすんでのところで社長にガシっと腕を掴まれた。


「皆川さん、どこいくの?」
「え? え? えっと。あの、帰ります」


社長の目が点になる。


それから「うはは」と笑い出した。


「皆川さん、何考えてんの。もう授賞式始まるんだから。冗談うまいな」


違う。
冗談じゃなく、本気で逃げたいです。


敵前逃亡。


「佐田さん見ないで帰るなんて、損だよ。なんてたって、去年アカデミー助演賞の候補だったんだから。すごい人だよ」


知ってます、そんなこと。


「それに今日の主人公は、皆川さんだよ」
社長はぽんと肩をたたくと、「じゃ、いこか」と光恵の腕を引っ張る。


「え? でも、あのっ」
抵抗むなしく、光恵は会場へと連れて行かれる。
そして丸テーブルの席へと座らされた。

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