おててがくりーむぱん2
黒い髪がライトに光る。
グレーのスーツに、ブルーのネクタイ。
彼の指がマイクに触れると、光恵の心がどきんと音を立てる。
すごく素敵な人になった。
孝志が口を開いた。
「ある人が、僕にいいました」
孝志が会場を見回す。
「時には流れがある。
逆らっても、決壊するんだ」
「当時、僕は一人の女性に恋こがれていました。
彼女の為に生きて、彼女のために死ねる。そのくらい。
でもその情熱が、決壊を引き起こした。
彼女は世間から批判され、僕は仕事を失いました」
孝志が少し考えるようにうつむく。
それから再びしゃべりだした。
「彼女は指輪を返し、僕はアメリカに渡りました。
飛行機に搭乗する前、彼女に言ったんです『また再び、必ず、巡り会える』と」
会場が少しざわつき始める。
光恵は孝志の姿から目が離せない。
「何いってんのかね?」
社長が耳元でささやいた。