おててがくりーむぱん2


「僕は信じていたんです。
だからこそ、自分のできる最大限の努力をして、彼女と再び出会える日を待ちました」


そこで初めて、孝志は光恵を見る。


笑った。


「だから、彼女の名前をこの『SBCシナリオ大賞』の受賞者に見つけたとき、言葉になりませんでした」


カメラのフラッシュが一斉に光る。
光恵の側にあっという間に報道陣が集まって来た。


「どうなってる?」
社長は隣で慌てている。


「彼女と結ばれる運命ならば、この時の流れのなかで、再び出会う。信じていたことは間違いじゃなかった」


孝志が「皆川光恵さん、受賞おめでとう」というと、MCが「皆川さん、舞台へ」と声をかけた。


舞台へと続く階段。ほんの五六段ぐらいなのに、よろけて手をついた。


まだ水の中にいる。
息ができない。


最後の一段を昇りきり、舞台中央の孝志を見た。


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