おててがくりーむぱん2
「きゃーん。カッコイイ!」
春恵は再びミーハーな声を上げた。
「野島輝なら、会わせてあげられるよ」
孝志は春恵にそう言いながら、ソファの席に戻って来た。
「え!? 今ネットドラマで人気の? うれしー」
「お姉さんを取り合って、僕が勝ったんだ」
「嘘でしょ? ほんとに?」
春恵は信じられないという顔で、光恵を睨みつける。
「お姉ちゃんのどこにそんなモテオーラがあるのかわかんない。普通の顔だよ」
「あ、ひどい」
光恵は春恵のお腹にパンチを入れた。
「佐田さん、今日はこのままお夕飯をご一緒しませんか?」
母親が訊ねる。
「そうしたいのはやまやまなんですが、これから仕事が一本入っているんです」
「まあ、お忙しいのね……」
母親は残念そうに、肩を落とした。
「えー、もう帰っちゃうの?」
春恵がふてくされたように、甘えた声を出す。
「また今度、ゆっくりね」
光恵は春恵の猛攻から逃げたくて、孝志を促し立ち上がる。とにかく今日は許しを得ることができたのだから、大きな進歩だ。
玄関から外に出ると、蝉の鳴き声と、相変わらずの熱気。けれど日陰は涼しくて、ほっと一息つくことができた。