おててがくりーむぱん2
番外編【十分後の僕たち】
もみくちゃにされながら、舞台から降りる。
腕のなかには、大切な女性。
俺はやった。
とうとうやりとげたんだ。
油断すると小躍りしそうになるのをぐっと堪えて、孝志は幸せそうな笑みを回りに見せながら、控え室へと歩いて行く。
断られたらどうしよう。
まじで、すっごいかっこわるいじゃないか。
でもそんな不安は、彼女が孝志を見つめる眼差しを見て、吹っ飛んだ。
まだ彼女は俺を好きでいてくれる。
目がチカチカするようなフラッシュの中、二人で部屋に飛び込んだ。
蛍光灯の下。
突然の静寂。
横を見ると、彼女が孝志を見上げていた。
孝志は彼女の額にかかる髪を手でかきあげて「久しぶり」と声をかける。
「……」
何も言わず、光恵は孝志を見つめる。
「びっくりした?」
孝志は少し不安になって、光恵の指にはめられた指輪を確認する。
彼女、オッケーしたんだよね?