おててがくりーむぱん2
「最低! 最低! 最低!」
光恵はそう言うと、泣き始めた。
どうしよ。
ないちゃった。
孝志はどうしていいのか分からず、泣いている光恵の回りであたふたした。
「じゃあ、わたしが賞に落選して泣いてたときも、誕生日を一人っきりで過ごしてたときも、側にいたってこと?」
「いつもって訳じゃあ……」
「でも声はかけられたのよね? わたしに『ただいま』って言えたのよね」
「そっかな」
孝志は困って首を傾げた。
「最低! なんで、そんな……側にいたのに、わたし気づかなくて……最低……」
「ミツ」
孝志の心がぎゅううっと締め付けられた。
「あなたはどんどん先にいってしまって。悩んで眠れなくて、ご飯食べられなくて、心細くて、泣きたくて」
「うん」
「側にいただなんて……会いたかったのに、なんで?」
「うん、俺もすごく会いたかったよ」
孝志は光恵の涙に濡れる頬を、そっと手の甲で拭った。
「失敗を繰り返したくなかったんだ。またミツと離れるのは堪え難かった。だから、自然と二人が出会うまで、我慢したんだよ」
「……」
「ほら、会っただろう。今、一緒にいる」
「うん」
「すごい時間かかったけど」
「うん」
「でも、一緒にいる」
「うん」