おててがくりーむぱん2


「いかなきゃ」
光恵は孝志の腕をすり抜けると、慌てて鞄をつかんだ。



「どこへ?」
予想外の展開に、孝志は唖然として光恵を見つめる。


「家へ。帰って仕事しあげなくちゃ。明日締め切りなの!」
「は?」
「ごめんね、また今度」


光恵が部屋を飛び出そうとするので、孝志はあわてて腕を引っ張る。


「ちょっと、待って。今度って、いつ?」
「わかんない」
「わかんないって……」
「連絡するから……あ、連絡先しらないけど。孝志はストーカーだから、わたしの家知ってるよね。じゃあ、連絡して」
「えええ!?」


光恵はにこっと笑うと、孝志の頬に素早くキスをする。


「じゃあね」
光恵は手を上げる。
彼女の顔を見ると、もうすでに孝志の顔は視界に入っていない様子。


そして風のごとく、部屋から出て行ってしまった。



「嘘だろ」
孝志はあまりの出来事に、力なくソファに座り込んだ。


「感動の再会のはずだったのに。信じられない……。今度っていつだよ。明日から俺、撮影が入ってるのに」
孝志は「くそーぅ」と頭をもしゃもしゃかきむしる。



俺たち、結婚……できるのか?



番外編【十分後の僕たち】 完

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