おててがくりーむぱん2
4
「あー、疲れた。皆川先生、これから飲みに行かない?」
うーんと腕をのばしながら、白鳥先生が声をかけた。
「あっ、今日はちょっと」
光恵は鞄に教材をしまいながら、頭を下げた。
授業終わりの九時過ぎ。廊下にはまだ子供達が歩いている。
「えー、予定あり?」
「すみません」
「はあ、じゃあ、わたしはお一人様と行くか……」
白鳥先生は首をコキコキと鳴らして、席を立った。白いワンピースに薄いグリーンのカーディガン。光恵の8歳ほど上だが、話は意外と合う。世話焼きでいい人だが、少々ミーハーだ。
「じゃあ、お先に失礼します」
光恵は鞄を抱えて席を立つ。
「おつかれさま」
白鳥先生は笑顔で手を挙げた。
エントランスの階段をぽんぽんぽんとはねるように降りると、道路の少し先に白いBMW。しっとりとした夜の空間では、とても目立った。
「お待たせ」
光恵が声をかけると、帽子を目深に冠った孝志が車から降りて来た。