おててがくりーむぱん2
5
小太り孝志にそっくり。
光恵はこみ上げてくる笑いを必死に押さえて、孝志の母親に作った笑顔を向けた。
あのぷっくりしたホッペも、くっきり二重の目も、ほら、ちょっとした仕草さえ似てる。
この親にして、この子ありだわ。
「かあさん、何飲む?」
孝志が訊ねた。
有名ホテルにある、日本料理屋の個室。八畳ほどの部屋に、雪見障子。そこから、ししおどしが、水鉢に細い水を注いでいるのが見えた。
空調がきいていて心地よい。でも彼女は適度に汗をかいているらしい。
ほんとうに孝志にそっくり。
「お茶を」
母親が手をおしぼりで拭きながらそう言うと、着物を着た給仕の女性が「はい、お持ちいたします」と答えた。
「孝志、お前は?」
「おれも一緒で。車だから。ミツは?」
「あっ、わたしもお茶をお願いします」
障子が閉まると、なんとも言えない空気が漂った。
ああ、緊張する。
嫌われたらどうしよう……。
光恵はぎゅっと手を握りしめた。