おててがくりーむぱん2
その後三人で食事をしたが、正直なんの味も感じなかった。
母親が言うことはもっともで、でも自分の年齢や未来を考えると、結婚は今しかないというのも本当で。
光恵の頭の中はごちゃごちゃ。おんなじところを堂々巡りしているようだ。
答えが出ない。
母親をホテルに送りとどけた後、車の中で孝志と二人黙り込んだ。窓の外には夜の東京。光が流れて行く。
「ミツと結婚したい」
ハンドルを握りながら、孝志が言った。
「うん」
光恵は自分の手を膝の上で握り合わせる。婚約指輪がキラリと光った。
「でも今の仕事も続けたい」
「うん、わかってる」
「母さんはああ言ってたけど、やっぱり隠して結婚するしかないよ」
「……うん」
「俺……子供っぽいかな……」
眼鏡をかけた孝志が、悲しそうに顔を歪めた。
「ううん」
光恵は首を振った。
「ミツ、愛してるよ」
「うん、わたしも」
「離れないで」
「うん」
光恵はそう頷きながら、ぐっと涙をこらえた。