おててがくりーむぱん2
過去のひと
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自分のデスクに座って、光恵はふうっと溜息をついた。あと三十分で授業が始まる。机の上においた自分の手を眺めた。婚約指輪を無意識にくるくると指で回す。
このまま結婚していいんだろうか。
誰にもこの結婚を告げないって、可能なんだろうか。
光恵は心の中で首をかしげた。
孝志の母親が言っていたように、子供ができたらどうするの?
孝志とは一緒に子供を育てられない。
一緒に遊園地や動物園にだって行けないし、幼稚園や学校の行事にはいつもパパ不在。
それって、わたしの望んだ結婚の形なんだろうか……。
「み〜な〜が〜わ〜せんせ〜」
突然後ろから呪われたような声がきこえて、光恵はびっくりして振り返った。
「白鳥先生……!」
目の下に薄黒いクマをつくった白鳥先生が、光恵の後ろに立っていた。
「だ、大丈夫ですか?」
光恵はそのただならぬ様子に、目を丸くした。
「先生……あなたはわたしと同類だと思ってたけど、違ったのね……」
光恵は少々恐怖を覚え、ごくりと唾を飲み込んだ。