おててがくりーむぱん2
3
「佐田さん、このシーンを持ちましてクランクアップです。おつかれさまでした〜」
広いスタジオに、大きな声が響く。
「ありがとうございました」
孝志は花束を抱えながら、笑顔で頭を下げた。
いい現場だった。スタッフも良かったし、共演した人たちもベテランが多く、勉強になった。シーズンを通じて視聴率も良かったので、孝志は胸を撫で下ろした。
「監督、おつかれさまでした。ありがとうございました」
孝志は自分より少し年上の、三十代前半の監督のところで頭をさげた。
「なんだよ、改まって」
監督の佐々木は、うれしそうに頬を緩ませた。
「一応、礼儀でしょ」
孝志がにやりと笑う。
「孝志、よく頑張った。ありがとう。いい作品ができたよ」
佐々木は笑顔で孝志の肩を叩いた。
「今度、飲みに行こう」
佐々木が誘う。
「もちろん」
孝志も頷く。
このドラマを通して、孝志は佐々木と親交を深めた。気取らなくていい関係。
笑顔でこのドラマの話をしていると、ふと佐々木の薬指に指輪があるのに気づいた。今まで長いこと一緒にいたのに、気づいていなかった。
「あれ、佐々木さん、結婚してんだ」
「お? 何今更いってんの? 俺もう、二十四の時に結婚したよ」
「へえ、若いですね」
「ああ。もう、あいつしかいないって、そのとき思っちゃったんだな」