おててがくりーむぱん2
なんでみんなして、俺が結婚するのを「無理」っていうんだろう。
バスルームでシャワーを浴びながら、孝志は考えた。
好きな人がいる。
ずっと一緒にいたい。
だから結婚する。
めちゃくちゃ普通じゃないか!
暖かい湯が滝のように流れるバスルームで、孝志は拳を作って突き上げた。
この仕事の特殊性は理解してるつもりだ。応援してくれる人がいるから、仕事をできているのも分かってる。ファンの交流サイトでは、自分への愛が溢れていて、たまに申し訳なく感じるときもあるくらいだ。こんな俺を、好きでいてくれる。
俺が結婚すると、みんな、背を向けるっていうんだろうか。
あんなに「すき」って言ってくれてる人たちが?
いい仕事をすれば、頑張っていれば、みんな離れていったりしないよね?
孝志はシャワーの湯を止めると、子犬のようにふるふると頭を振った。
ミツ、会いたいな。
孝志はバスルームから出ると手早く身体を拭いて着替える。
一目散に楽屋をめざし、部屋に飛び込んだ。
濡れた髪のまま、携帯を取り出し、ミツにラインを入れる。
「今仕事おわった。今日あいたい」
入力し終わると「よし!」と小さく声が出た。