おててがくりーむぱん2


「え、ほんと?」
光恵はびっくりして、グラスを持とうとした手が止まった。


「ああ。いい芝居だった。もちろん話も」
「そう……ありがとう」
光恵はなんだかこそばゆい気持ちがする。


「俺は、光恵がちゃんとした企業に就職しないのを、理解できなかった。現実的じゃないって」
「うん」
「でも、光恵の芝居を見たら、不思議と満たされた気分になった。光恵の見てた未来がそこにあって、俺が闇雲に責めてしまったことを、初めて後悔した」
「……」
「悪かったな」
佑司が頭を下げた。


「ううん、いいの。結局……わたしは書き続けられなかったんだし」
「また書けばいいじゃないか」
「そうよね、わかってるんだけど、なんだろう……エネルギーが枯渇したっていうか」


光恵はそういいながら、なんだか惨めな気持ちになってくる。
そんな気持ちをごまかすように、光恵はワインをぐいっと一口のんだ。


「佐田孝志の芝居がすごかった。そのとき、もう釘付けになって」
「へえ」
光恵は少し誇らしい。自分が得られなかった賞賛を得ているような、そんな気分になる。


「俺が見た時は、まだ有名じゃなかったと思うな」
「うん、そう」
「でも、やっぱり、出るひとは違うよな。もう、圧倒されたよ」
「ありがとう」


光恵が思わず言うと、佑司が少し首を傾げた。


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