おててがくりーむぱん2
「どんな仕事してんの?」
「えっと……普通の……」
「営業?」
「そ、そう」
光恵は慌ててそう言った。
架空の婚約者像を、頭の中で設定しておかないと、ぼろが出てしまいそうだ。
「いい奴なんだよな」
「うん」
「じゃあ、よかった。光恵が幸せなら、それが一番だ」
「うん、ありがとう」
「大学の奴らに、婚約パーティ開けって言っておくよ。今でもよく飲むんだ」
「え!?」
光恵の心臓が思わず飛び上がった。
「光恵の心を射止めたのがどんなやつか、みんなで冷やかし半分で見てやる」
佑司がさわやかな笑顔でそう言う。
と、とんでもないっ。
「あ、あのっ、ちょっと、人前に出るのが苦手な人で……」
光恵はあたふたとし始める。
佑司はきょとんとした顔で、みるみる青ざめる光恵を見つめた。
「みんなに紹介できない奴なの?」
「えっ、あのっ、そ、そうかな」
佑司がグラスを置き、厳しい顔をして光恵を見る。
「やましい男なのか? 不倫とか、駄目だよ、絶対」
「え? ははは、そんなんじゃ……」
「じゃあ、なんだよ」
「いや、本当に、引っ込み思案で」
しどろもどろの光恵を、佑司は疑いの眼差しで見つめる。
「本当に大丈夫なやつなのか?」
「うん」
「……そっか、ならいいけど」
佑司はいまいち納得していないというような、憮然とした表情でワインを飲んだ。