おててがくりーむぱん2
「だからっ。今度結婚するって、ちゃんと話してたんだから。孝志が想像しているような、そんなおかしなことはなかったの」
「だって、ここで抱き合ってたじゃないか」
「それは……なんていうか、お別れのハグ」
「ハグ?」
「そう、ハグ。別れるときにやるじゃない?」
「やらないよ、日本人だもん……あ、この人、ハーフなんだ!」
孝志がぱあっと顔を明るくする。
佑司はきょとんとして、それから声を出して笑い出した。
光恵は思わず溜息が出た。
「テレビのイメージと、随分違う」
「そう、ね。役者なので……演じてるのよ」
「何の話?」
孝志が首を傾げる。
「なんでもない」
光恵はイライラしながらも「天然なの」と佑司に言った。
「あのね、本当に申し訳ないんだけど、このことは誰にも言わないで欲しいの」
「佐田さんと付き合ってること?」
「うん、それと結婚のことも」
「……でもいずれ、発表されるだろ?」
光恵は頭を振る。
「秘密なの?」
「うん」
「……それでいいの?」
佑司が心配そうに訊ねた。
光恵は「うん」とうなづくしかない。
そうする以外、方法はないのだから。