おててがくりーむぱん2
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「許可できません」
静かに、穏やかに、そう言われると、反論する気もおきない。青山の事務所。志賀はデスクに座って、微笑んでいるようにも見える。
マジで怖い。
「来年の半ばまで、仕事は決まってます。それにまだ二十九歳。応援してくれている女性達は、佐田さんを恋愛対象として見ているんですよ。今決まった相手がいることを公表すれば、支持を失う。そんな危険なことを許す訳にいかないんです」
オーク材の机の上に手を載せて、ちらりと光恵を見た。眼鏡の後ろの目が冷たく光る。
完璧怒ってる。
光恵はごくりと唾を飲み込んで、あわててうつむいた。
「じゃあ、僕は何時ごろ、家庭を持てますか?」
孝志が冷静にそう訊ねた。
「そうね……そのときの仕事にもよるけれど、三十五から四十ぐらいが理想ね」
三十五!!!!
光恵はびっくりして「え!!?」と声をあげてしまった。
同い年なんだから、光恵も必然的に三十五から四十になる。それって……。