おててがくりーむぱん2
超パニック。
孝志は心を顔に出さないよう、懸命に演じつづけた。
「でも、あなたとは終わってる」
「そうですね……」
佑司はそう言うと、少し背筋を伸ばした。
「光恵が幸せになるなら、僕は何も言わない。身を引くつもりでした。でも相手があなたとなると、問題がある」
「問題などありません」
孝志は胸を張った。
「結婚することを、誰にも言わないんですよね」
「そうです、今のところは」
「じゃあ、表向きは独身で通すと」
「はい」
「彼女はそれで幸せですか?」
孝志はぐっとつまる。
「彼女は赤の他人だと、人に言い続ける。それは、いざというときに彼女を守れないってことと、一緒ですよね」
「守れますよ」
「自信があるんですか?」
ここで演技しなくちゃ。
自信があるって、こいつに見せなくちゃ。
でも孝志は言葉を発することができない。
黙り込んだ。
「確かに、今、あなたが結婚を発表するのは難しい。一番乗ってる時期だ」
「……」
「結婚したら、仕事を失うかもしれない」
「……そうですか?」
佑司は少し考えてから「あなたに求められているものは、芝居だけじゃない。女性達の理想の男性で、架空の恋人なんだ」と言った。