おててがくりーむぱん2


「その人に特定の女性が現れたら、皆落胆すると思いますよ」


孝志は動揺を隠すため、コーヒーカップを手にする。
少し冷めた、苦い水。
うまくもなんともない。


「仮に僕が彼女を守れないとしても、彼女があなたに振り向くとは思えない。一度終わっているのだから」
孝志は佑司を必死に言いくるめようとする。


このままでは、ミツを奪おうと、全力で来るにちがいない。


「知ってますか? 初めての男って、案外忘れられないもののようですよ」


初めてのオトコ!?


孝志は完全に顔が青ざめる。


そうか。
最初のオトコ!
やばい、マジで。


「僕には彼女が初めてのオンナです!」
「え?」


佑司の目が丸くなる。


ああ、失敗した!
とんちんかんなこと言っちゃった!


孝志の「大人の男」像が、悲しくも崩れ落ちてゆく。


「そうですか」
佑司がにやりと笑う。「じゃあ、光恵を離したくないですよね」


< 64 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop