おててがくりーむぱん2


「いや、これもご縁だしね。今度の会議で、ぜひ佐田さんを推させていただきますよ」
「ありがとうございます」
「佐田さん本人が乗り気になってくれれば、この案を押すのは難しくないし」
「はあ」
「困ったもんでね。代理店が佐田さんは高すぎるって、頷かないんですよ」
「はあ」
「でもこっちとしては、佐田さんでいきたいんだ。だからちょっと口添えをしていただいてね」
「はあ」
「お値段も、お友達価格っていう訳には……いかないですよね。はは、失礼しました」
「いえ……」


孝志は宣伝部営業の押しの強さに、圧倒されっぱなしだ。


「鈴木ぃ。ところで、佐田さんとはどこで知り合ったんだ?」
突然、進上は思いついたというように、質問してくる。


「元カノが、佐田さんと知り合いで」
「おお! まじで? 離婚原因の?」
進上は、飛び出ちゃうんじゃないかってくらい、目を大きく開いた。


「やめてくださいよ」
「おっと、すまんすまん。トップシークレットだったなあ」
進上の顔に反省の色はない。


「もしうまく契約できたら、鈴木現場に来いよな。佐田さんもリラックスできるだろ?」


とんでもない!
仕事場にまでくんなよ!


胸にわき上がる憤りを隠して、孝志は微笑みを浮かべた。


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