おててがくりーむぱん2
孝志が「それは……」と絶句した。
「佐田孝志とお付き合いするっていうことは、それくらいの覚悟がいるってことなんですよ? 皆川さんなら分かっていらっしゃると思っていましたけど」
「はあ……」
光恵は口をあんぐり開けたまま、間の抜けた声を出してしまった。
「彼女は同い年なんです。彼女に三十五まで待てとおっしゃるんですか?」
「そうです」
「でも」
「嫌なら」
威厳のある声が、部屋に響く。孝志は開きかけた口を閉じた。
「お別れになればいい」
志賀の背面には、窓から見える都会の風景。真夏の日差しが容赦なく部屋を暖める。でも光恵の心は、あっという間に北極へと送り込まれた。
志賀はにこりと笑うと「お分かりいただけましたか?」と言った。
孝志はうつむいて、光恵の腕を引いた。そのまま背を向けて部屋から出ようとする。彼の後頭部を見ながら光恵は更なる衝撃を受けた。
もうあきらめちゃうの?