おててがくりーむぱん2
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事務所の一室。
クーラーは入っているが、窓を開ければ秋の匂いが流れ込む、そんな季節。
結婚話は具体的に何も進んでいない。
周囲に秘密にするとなれば、結婚式も披露宴も、それから一緒に暮らすということもできない。
ただ二人で籍を入れるだけだ。
光恵は本当にそれでいいんだろうか。
小さな式ぐらいは開きたい。
彼女のウェディングドレス姿を見たい。
彼女のベールをそっとあけて、彼女の唇に誓いの口づけをする。
そんな瞬間を経験したい。
男の俺でもこんな風に考えるんだ。
光恵もきっと、ドレスを着て祝福されたいだろう。
机にほおをついて、孝志はぼんやりとそんなことを考えていた。
両親や事務所に反対されていると、なかなか次の行動に出られない。
どうしたらいんだろう。
そこに扉をノックする音。
ファイルを抱えた志賀が、部屋に入って来た。