おててがくりーむぱん2
「おはようございます」
孝志は頭を下げた。
「おはようございます。いい季節になったわね」
志賀は薄手のブルーのカーディガンを羽織り、今日も穏やかで上品そうに見える。
「この後、雑誌のインタビュー。それからCMの打ち合わせが入ってるから」
志賀は座りながらそう言った。
「CMって?」
「キャノル。オフィスプリンター」
志賀にそう言われて、孝志は「ああ」と声をあげた。
「僕に決まったんですね」
孝志がそう言うと、志賀は「そうそう」と頷いた。
「そういえば、キャノルに友達いるの? なんだかそんな感じの話が入って来てて」
「……友達じゃあ、ないです。たぶん」
「そうなの? じゃあ自称友達ね」
志賀は、よくあることというように、頷いた。
「友達じゃなくて、ライバルです」
孝志は言った。なぜだか佑司を誤解されたくない気持ちになったからだ。
「ライバル?」
「はい、彼女の元恋人なんです」
志賀は「そう」と面白そうな顔をした。
「じゃあ、負けられないわね」
志賀はそう言うと、にっこりと笑う。「いい仕事して」
「はい、もちろんです」
孝志は頷く。
言われなくてもちゃんとやる。
あいつには負けられない。