おててがくりーむぱん2
扉が閉まると、気まずい時間。
所在なげに立っていた佑司に、孝志は「座ったら?」と自分の前の席を指差した。
佑司は軽く頭を下げると、素直にソファに腰を下ろした。
「あさっては、すいません」
突然、佑司があやまってきた。
孝志は首を傾げる。
なんでこいつ謝ってるんだ?
「僕が婚約者ってことのほうが、職場でも都合がいいと思って」
「……こんやくしゃ? 誰の?」
「光恵の……あれ?」
佑司の顔が「まずった」と言っている。
孝志の背中が、不安でぞくぞくとしてくるのが分かった。
「鈴木さんが、光恵の婚約者ってことになってる?」
「やむをえず」
「聞いてない」
「あれ?」
佑司は首を傾げながらも、どこか楽しんでいる様子を見せた。
「それであさっては……」
「光恵の同僚と一緒に、飲むことになってるんです。婚約者として」
孝志の視界が、嫉妬でゆがんでくる。
こいつが、光恵の婚約者?
俺なのに。
おれなのにいいいいいいいいいいっ。