おててがくりーむぱん2
「やめてくださいっ」
孝志は必死の形相を隠そうともせず、身を乗り出した。
「やめたら、光恵が困るんですよ」
反対に佑司は、ゆったりとソファに寄りかかる。
「どうしてそんな……」
「これからも、こういうこと、たくさん出てきますよ。秘密にするって、こういうことです」
佑司が言う。
「どこで?」
「渋谷で」
「……ボディタッチ禁止」
孝志は喘ぐように言った。「ちょっとでも触ったら、罰ゲーム」
「罰ゲームって」
佑司が笑い出す。「ほんと、佐田さんって、めちゃくちゃおもしろい人ですね」
馬鹿にされてる?
孝志は口を尖らせた。
「でも……婚約者なんだから、少しは仲良さそうに見せないと」
佑司がしれっとそんなことを言う。
「それって、どういう?」
「一応建前は婚約披露のパーティなんです。リクエストがあったら、キスぐらいは……」
佑司がにやりと笑った。
「き、きす? 駄目ですよ。絶対に駄目。ほっぺも駄目。っていうか、光恵の半径1メートル以内には入らないで」
「そんな訳にいかないでしょう」
「く、くそー」
孝志はきれいにセットされていた髪を、くしゃくしゃとかきむしった。