おててがくりーむぱん2


「じゃあ、佐田さんお願いしまーす」
ドアのノックと共に、スタッフの声がかかる。


孝志はぎりぎりと歯ぎしりをしながら、佑司をじいっとにらみつける。


あいつ、光恵を本気で取る気だ。
このやろおおおおお。


戻って来た志賀が孝志の頭をみて、「なにそれ!?」と声をあげた。
「ちこちゃーん。ごめん、佐田のヘア、ちょっと見てもらえる。なんだかもしゃもしゃになってる」


走って来たヘアメイクの女性が、孝志の髪を見て「きゃーっ」と声をあげた。


「何したんですか、佐田さん。本番前なのにぃ」
ちこは孝志の腕を引っぱり、鏡の前に連れて行く。


鏡越しに見ると、佑司が部屋を出て行くところだった。
佑司はちらりと孝志を見ると、最高の笑顔を見せる。


なんてことだ。


孝志は呆然として、鏡の中の自分をみつめた。
頭上から、ちこがぶつぶつと文句を言っているようだったが、耳に入らない。


あさって。
パーティを阻止しないと、ミツの唇が危ない。


思わず孝志は頭に手をやり、パシンとちこに叩かれた。


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