おててがくりーむぱん2
「オフィス最速プリンター、ディノス」
「ハイ、カット。チェックはいりまーす」
監督の声がすると、孝志ははっと我に返った。
ライトの下は、最高に暑い。
汗を拭きに、ちこが走ってくるのが見えた。
何度も何度も、同じ台詞を繰り返す。
言い方を少しずつ変えながら。
落ち着かない心を押し込めて、求められている姿を見せる。
ああ、しんどー。
ちらりとスタジオの隅を見ると、佑司が見ている。
気になるなあ。
なんであいつ、俺が台詞を言うと、笑ってんだ?
「はい、オッケーです。おつかれさまでしたっ」
若いCM監督が、ほっとしたような顔を見せて、声をあげた。
拍手を聞きながら安堵を感じる。
とりあえず取り乱さずに、全部をやり通した。
孝志は心の中でガッツポーズをしながら、暑いライトの下から抜け出した。
目がしばしばする。もう撮影は終わったのに、まだ頭の中には台詞が駆け巡っていた。
「おつかれさまでした」
孝志が一人になった瞬間を見計らって、佑司が歩いて来た。