おててがくりーむぱん2
渋谷のレストラン。
各部屋はまるで料亭のように障子で仕切られ、隠れ家的で女性に人気だ。
予約していた部屋に入ると、すでに佑司が友人二人と座っていた。
「お待たせ」
光恵は軽く会釈をすると、靴を脱ぐ。掘りごたつのようなテーブルに、男性陣と向かい合わせで座った。
「まずはドリンクオーダーから」
佑司はてきぱきと仕切って行く。そういえば、彼は飲み会の幹事をすることが多かった。それほど目立つ存在ではないのに、いつのまにかリーダーになっている。そんな人だ。
女性達は甘いお酒を。男性陣はビールを注文した。
「今日はお二人の婚約パーティです」
白鳥先生がグラスを掲げる。
「おめでとう! かんぱーい」
「かんぱーい」
甘くて少し苦いお酒。今日の光恵は、まったく酔う気になれない。佑司はいつも通りの顔で座っている。眼鏡の奥の目の脇には、うっすらと笑い皺が入っていて、かつて彼の目尻に口づけたことを思い出した。
視線に気づいて、佑司が光恵を向く。
笑いかけた。
この胸がじんとする感じ。
これはきっと、懐かしさだ。
きっとそう。