おててがくりーむぱん2
「ねえ、いいの? 皆川先生」
隣の白鳥先生が、心配そうに光恵に訊ねた。
「大丈夫です。最近、イタ電が多くって」
光恵はごくりとお酒を飲む。
「こわいっ。鈴木さん、気をつけてあげてくださいね」
「はい、もちろん」
佑司は頷きながらも、困ったような顔をして光恵を見つめている。多分、電話の向こうに誰がいるのか、わかっているのだ。
すると突然、後ろの障子ががらっと開いた。
「遅れてすみません」
この声……もしや……
光恵が恐る恐る振り向くと、案の定、孝志が立っていた。
光恵は驚きすぎて、声を出せない。他の人たちも同様に、ぽかんと口を開いて、孝志を見つめていた。
「仕事が押しちゃって、ごめんね、鈴木」
孝志は帽子を取ると、黒いストレートの髪を手でくしゃくしゃっとする。それから「失礼」と言って、光恵と白鳥先生の間に、ちゃっかりと入り込んで来た。
「さ、佐田さん……どうして?」
白鳥先生の顔が、興奮で真っ赤になっている。
「あれ? 知りませんでした? 鈴木に誘われたんですよ。ミツも来るっていうから、飲みに来ちゃいました……お邪魔だったかな?」
孝志の悩殺スマイルが炸裂した。
甘いマスクに、耳の奥にじんとくるような、低い声。
「そんな、お邪魔だなんて。そんなわけないじゃないですかあ」
白鳥先生も、吉田さんも、うっとりと孝志を見つめている。
光恵は頭をかかえた。