おててがくりーむぱん2
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千葉県。都心へのアクセスがよく住宅が多いが、それに負けず劣らず畑も多い。東京のように高いビルもマンションもなく、どことなくのんびりとした雰囲気だ。
孝志の車で国道を走り、光恵の実家へと向かう。
「いい天気だね」
孝志はうれしそうにそう言った。
光恵は曖昧に頷いたが、頭の中は両親と妹の顔がちらついている。どんな騒ぎになるのか、想像もつかない。
結婚させてください。
でもみんなには秘密ね。
そんなこと通用するんだろうか。
国道から脇道へ入り、急な坂を降りて行く。道路脇の畑では、農作業をするお年寄りがいて、灼熱の日差しの中額に汗をして働いていた。
「あ、あそこ」
光恵は坂を下った先の、洋風の一軒屋を指差した。庭には花が咲き、蝶々がぱたぱたと飛んでいる。
すでに一台止まっている駐車場に、横向きで無理矢理駐車する。エンジンを切ると、孝志は大きく深呼吸をした。
「俺、大丈夫かな?」
孝志はそう言って、光恵に向いた。薄いブルーのジャケットに、白いシャツ。さわやかさ溢れる装い。
「大丈夫」
光恵はそう言ったが、あまりにもオーラを放ちすぎていて、「みんな引くんじゃないかな」とも心配した。
「普通でいいからね」
光恵は孝志に念を押す。
「普通って?」
「ほら、わたしと一緒のときみたいな。外向きの顔じゃなくていいから。妹を悩殺とか、やめてほしいの」
「何おかしなこといってんの?」
孝志は小さく笑うと、ドアを開ける。
いや、フェロモン出過ぎてるから。自覚ないのかなあ?