おててがくりーむぱん2
「佐田さんは、結婚式には出席されますか?」
少々浮かれている吉田さんが、孝志に訊ねる。
「仕事の都合次第ですけど」
「二人が付き合ってたって、知ってたんですか?」
「いや、ぜんぜん」
孝志が笑う。「だから、最初は冗談だと思いましたよ」
いたたまれない。
どうしようもない圧力を隣から感じて、光恵は逃げ出したくなってきた。
「ちょっと、失礼します」
光恵は席を立った。
部屋の外に出ると、大きく深呼吸をする。
そのままお店の外に飛び出した。
ビルの奥に出入り口があるため、渋谷の喧噪とは少し隔離されている。
小さなクラクション。埃の匂いに、遠くの人の気配。
お店の壁にもたれて、ぼんやりした。
「ミツ」
お店から、孝志が出て来た。
光恵は、ちらっと孝志の顔を見ると、視線をはずす。
イライラするとも、怒っているとも違う。
なんだか……そう、不安。
すごく心もとない。