おててがくりーむぱん2
孝志は言い返さない。
ただ光恵の腕を掴む手に、力がこもっているのがわかった。
そこに「佐田さーん」と声がして、レストランの戸口が急に開いた。
驚いて孝志の手が緩む。
つぎの瞬間、光恵は佑司に引っ張られて、胸の中にすっぽりと入っていた。
さらっとしたYシャツの感触を、頬に感じる。
孝志とは違う、コロンの香り。
振り返ると、真っ青な顔の孝志がいた。
「いたいた、ここに」
白鳥先生は少し酔っているのか、言葉が少々揺れている。
「どっかいっちゃったから、心配しちゃいましたよ」
白鳥先生が、割と大胆に孝志の腕を掴んだ。
「もうっ。カップルはここで楽しんでたんだ。やあね。ほんと、見せつけられて」
「すいません」
佑司は謝った。その間も、光恵の身体を包む腕が離れることはない。
「もどろもどろ。みんなまだまだ飲みますよっ」
白鳥先生が、孝志の袖を引っ張った。
「じゃ、戻ろうか、光恵」
「……うん」
光恵はほっとして、佑司の顔を見上げた。
あれ?
なんだか……顔つきがいつもと違……。
そう思った瞬間、佑司は光恵のこめかみに、そっとキスをした。