おててがくりーむぱん2


一瞬の出来事に、光恵は固まった。


佑司の唇が離れると同時に、光恵も解放される。
光恵がはっと顔をあげると、能面のような孝志の顔が見えた。
蒼白だ。


孝志は光恵に顔を背けると、白鳥先生の後に続いて、レストランに入って行く。


何か言ってよ。
いつもみたいに。
「ミツは俺のものだ」って。
力強く抱きしめてよ。


でもここでは叶わない。
絶対に知られてはいけないのだから。


不安が光恵を支配する。
手の震えを止めるため、ぎゅっと拳をつくった。


「光恵」
佑司が言う。


「本当に彼と結婚するのか?」
「……」
「佐田さんは、光恵を守れない。今だって、このざまだ」


「なぜ、こんなことを?」
光恵は震える声で、佑司に訊ねた。


「あなたはこんな意地の悪いこと、したりする人じゃなかった」
「意地悪じゃないよ」
「嘘よ。かき回して、あの人のことをからかって、楽しんでるんじゃないの?」


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