木曜日の貴公子と幸せなウソ
第一章
思わぬ再会
「萌先生、さようなら!」
「さようなら。また明日ね」
教材を取りに行き戻ってきたら、玄関で靴をはいている男の子が私に気が付いて、そう言った。
自分の受け持ちの子ではないけれど、私はニコッと笑って手を振る。
靴をはき終えたその子は、外で待っているお母さんの元へと走って行った。
元気がいいなぁ……。
彼はこの幼稚園の年長クラスに在籍している。
1日過ごした上、預かり保育で4時半まで過ごしたのにあまり疲れた顔をしていない。
私なんて子どもたちが帰ると、途端に疲れがドッと押し寄せてくるんだけど。
まだまだ経験が足りない証拠なんだろうなぁ。
二宮 萌(にのみや もえ)、23歳。
幼稚園教諭になって、3年目。
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