木曜日の貴公子と幸せなウソ
爽やか牛丼デート
気持ちを落ち着かせて、1階に降りて行くと、美雪先生がエミちゃんに手を振って、見送っているところだった。
一緒にいる先輩は笑顔で美雪先生に軽く会釈をする。
その笑顔は7年前と何も変わらない。
心があたたかくなるような笑顔だ。
大好きだった、あの笑顔。
その顔で、ずっと遊ばれていたとは微塵にも思わなかったけれど。
「萌先生、鍵かかった?」
「……あ、はい」
「あの倉庫、鍵かかりにくいよね」
職員室に入ると、夏江に声をかけられた。
夏江は看板を雑巾で拭いている。
私は持っていた倉庫の鍵を元の場所へと戻した。
「あの、ごめん」
「ん?何が?」
「手伝ってなくて……」
かがんで言うと、夏江はプッと吹き出した。
「いやいや、私の方こそ。有坂先生に何か言われなかった?」
「大丈夫。この幼稚園は子どもが帰った後でも先生たちの笑顔が絶えないですねって言ってた」