木曜日の貴公子と幸せなウソ


どうしたらいい?

どうすればいい?

私は今、どうなりたい……?


「萌先生?」

「……あ、はい!」


ペンケースを見つめたまま立ち尽くしていたら、教室の外から声をかけられた。

振り返ると、先ほどのジャージ姿ではなくスーツ姿になった有坂先生がいた。

体操教室が終わったから、有坂先生もスポーツクラブの方に戻るらしい。


「考え事ですか?何度か声をかけたのですが……」

「す、すみません。ちょっとボーっとしちゃって」


何度も声をかけられているというのに、気が付かなかっただなんて最悪。

仕事中だっていうのに……。


「お疲れ様でした。これからスポーツクラブの方に戻られるんですよね?」

「はい。でも帰る前に萌先生にちょっと……」

「何でしょう?」


有坂先生に手招きされて、私はドアのところまで移動する。

< 108 / 207 >

この作品をシェア

pagetop