木曜日の貴公子と幸せなウソ
「あ、すみませんー!今行きます!」
そうだった。
私は今、仕事中だったんだ……。
しっかりしないと。
自分を奮い立たせるように、パンッと両手で頬をたたく。
もう過去の事なんだから、今さら思い出したって仕方がない。
成瀬さん……じゃなかった、片山さんだって、新しい人生を歩いているんだから。
向こうが何を言ってきたって、私とあの人はもう違うんだ。
同じだったのは、高校の時だけ。
……ううん。
あの時も、同じじゃなかった。
同じなんだって思っていたのは私だけだった。
教材室から黄緑の色画用紙を取り出すと、私は職員室に早足で向かった。