木曜日の貴公子と幸せなウソ


電車を降りて、改札のある階に上がると、すでに有坂先生の姿はあった。

人ごみの中でひときわ目立つ爽やかイケメン。

通り過ぎる女性が、何人も彼の方を振り返っている。

誰が見てもやっぱりカッコいいんだ……。


「……遅くなりました」

「意外と早かったね。オレも今来たところだし。じゃ、夕飯行こうか」


持っていたスマホを内ポケットに入れると、有坂先生は歩き出した。

私はその後ろを黙ってついて行く。

一体何を考えているのだろう?

そういえば、相談にのって欲しいとか言っていたっけ。

……もし、お酒が入る場所だったら断ろう。

有坂先生に限ってそんな事はないと思うし、考えすぎだろうけど。

だけど、爽やか笑顔で脅迫するような人だもんなぁ……。



「って、え、ココですか?!」

「そう。だって、ココなら絶対に間違いはないし」

「ま、間違いって……」


立ち止まった一軒の店の前。

私はそこを見上げて驚いた。


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