木曜日の貴公子と幸せなウソ
大丈夫……。
ずっと会っていなかった人と、突然思わぬ再会を果たして、驚いただけ。
しかも、その人に子どもがいた事にさらに驚いただけだし。
ショックとか、傷ついたとか、そんな事はない。
もう終わった事なんだし。
「動揺……なんかしない」
色画用紙で顔を隠すようにそうつぶやいて、深呼吸をした。
エミちゃんが入園してもう半年たつというのに、今まで全然気が付かなかった。
いつも、お母さんがお迎えに来ていたし……。
「萌先生、本当にごめんね」
「あ、ううん。大丈夫大丈夫」
職員室に入ると、夏江先生が申し訳なさそうな表情で、顔の前で手をあわせる。
私は首を横に振って、ニコッと笑った。
まるで、自分に言い聞かせるようにしながら……。