木曜日の貴公子と幸せなウソ
先輩にまだ番号とアドレスを送っていない。
『萌先生は彼をどう思ってるんです?』
有坂先生に言われた言葉が頭に響く。
私は彼をどう思っているのか……。
それは考えてはいけない気がして、ずっと避けていた事だった。
追究したって無駄な気がしたから。
だって、答えがわかっても状況は何も変わらない。
私は彼の1番にはなれない。
それは7年前からずっと。
『否定ばかりしていても先に進まないよ』
そんな事はわかっている。
だけど、肯定してこの状況を受け入れても、最後は自分が傷ついて終わる事は目に見えているのだ。
『きちんと自分が思っている事を相手にぶつけないと。続けるにしてもやめるにしても』
「ああもう、わかってますって!」
頭の中で繰り返される有坂先生の言葉にいらだって、私はドンッと拳を作ってテーブルに振り下ろした。