木曜日の貴公子と幸せなウソ


何で私はこんなに振り回されているのだろう。

オトナならこんな時、どんな対応をする?

余裕を見せたいのに、全然余裕を持てない。

オトナになりたい。

過去の事でいちいち反応している自分がすごく嫌い……。




「夏江、ちょっといい?」

「ん?どうしたの?」


次の日。

出勤して、教室内の準備をしていた夏江に声をかけた私。

机をセッティングしていた夏江は、不思議そうな顔で振り返る。


「来週、夕飯食べに行かない?」

「うん、いいよ。どこ行く?」

「あー、えっと、実はもう1人いるんだけど……」

「そうなの?誰?」

「……有坂先生」


小声で私が言うと、夏江は驚いて目を丸くする。


「有坂先生?え、萌って有坂先生の事好きなの?」

「ち、違う違う!年中クラスの先生と来年に向けての体操の時間について、話したいとかなんとか……って」


ごまかしてみたけれど、わざとらしかったかな?


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