木曜日の貴公子と幸せなウソ
7年前の恋
それは高校1年の秋の事……。
「二宮……萌ちゃんだよね?」
学園祭が終わり、校内は片付けの作業に追われていた。
生徒会が指定した段ボール置き場に、大量の段ボールを置きに来た際、突然声をかけられた。
顔を上げると、そこには成瀬先輩の姿がある。
一緒に段ボールを置きに来た、リサが小さい歓声をあげた。
「……はい」
段ボールを置いて先輩の方に向き直る。
成瀬先輩は3年生。
整った顔立ちに、勉強もスポーツも何でもこなす人気者。
少女マンガの世界にいるような、王子様的存在だった。
特定の彼女はいないらしいけれど、真相はどうだかわからない。
同じ学年ならまだしも、3年生と1年生じゃあまり接点もないし、噂話も回ってくる間に余計な尾ひれが追加されている事も多い。