木曜日の貴公子と幸せなウソ


申し訳なさそうに言うと、夏江は慌てたように両手を振る。


「あ、いいのいいの。急ぎじゃないから。ただ、ちょっと聞いてほしいなっていう話があるっていうだけで……」

「本当にゴメンね。月曜日でもいい?」

「うん、大丈夫」

「……私も、夏江に聞いてもらいたい話があるから」


今日、先輩に7年前の思いをすべてぶちまける。

もう二度と接触しないって宣言もする。

全てが終わったら、夏江に話そう。

木曜日の貴公子が、高校の先輩だったという事を。

明日、リサにもメールで報告して……。


「萌、顔が怖いけど大丈夫?もしかしてかなり深刻な内容?」

「あ、いや、大丈夫。さて、今日も頑張らないとね!」


ペチぺチと両頬をたたいて、気持ちを切り替える。

もうすぐ子どもたちが登園してくる時間だ。


笑顔で出迎えないとね……。


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