木曜日の貴公子と幸せなウソ
自分の教室に戻り、今日の流れをチェックした後、ペンケースに入れてあったスマホを見た。
新着のメールが一件表示されている。
『仕事が終わったら、連絡よろしく。迎えに行く』
差出人は先輩だった。
電源を落として、スマホを再びペンケースに戻した。
今日は金曜日。
来週の準備もあるし、作品展の準備もあるし、いつ帰れるかわからない。
それでも待っているというのだろうか。
……早く帰れるのなら、家族が待つ家に帰ればいいのに。
奥さん妊娠中なんだし、上の子もエミちゃんもきっとパパの帰りを待っている。
そんな事、先輩だったらわかるでしょ?
私に意地悪している場合じゃないのに……。
「お疲れ様。来週から忙しくなるし、今日はもう早くあがりましょう!」
パンパンっと手をたたいて、園長先生がそう言ったのは6時前。
もっと時間がかかるかと思った作業も、ほとんど終わってしまった。
やる事がなくて、来週の週案を書いていた私。
園長先生の言葉に、先生たちが更衣室へと移動する。