木曜日の貴公子と幸せなウソ


1年生でも、本気で成瀬先輩に恋をして、玉砕した人が何人もいる。

うちのクラスにも数人いたっけ。

その子は、失恋したけれど、もっと好きになったって話していた気がする。


「ちょっと……いいかな?」


目の前の成瀬先輩について、自分が知っている情報を頭の中で整理していたら、彼はそう言った。


「萌、私は先に戻ってるからね!ごゆっくり!」

「あ、うん……」


リサが顔を赤らめて、目をキラキラさせながら教室の方へと走って行く。

このシチュエーションじゃ、誰だって『告白される』というのを頭に浮かべるだろう。

でも、そんなわけがない。

成瀬先輩が私に告白だなんて。


私は成瀬先輩と全く接点はない。

一目ぼれされるような容姿はしていないし、部活だって無所属。

彼の目に止まるような要素は何一つないのだ。

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