木曜日の貴公子と幸せなウソ


「まあ、その辺は後で話す。んじゃ、別に何でもいいなら牛丼でもテイクアウトしていくか」

「え。牛丼、昨日食べたばかり……」


思わずポロッと出てしまった。

最後まで言わずに私は言葉を止める。


「牛丼、家で食べたの?」

「え?あー、ううん。食べて帰ったんだ」

「萌でも牛丼家に行くのか。すげー意外」


そんなに意外だったかな?

まあ、私も昨日初めて行ったくらいだし。


「……体操の先生が一緒だったから行ったとか?」

「えっ?何で知ってるの?」


……私はバカだ。

先輩の誘導尋問だったという事に、言ってしまってから気が付いた。

急に不機嫌そうな顔になった先輩は、路肩に車を止める。

そして、エンジンを切った。




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